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スペシャルゲスト対談:LiLiCo×西成活裕(2)

江戸時代の「思いやり文化」を取り戻せ

LiLiCo:私は便利になることや、それを求めること自体は、決して悪いことじゃないと思います。どんどん進歩して、立っているだけで生きることができたら最高だなって思う瞬間ももちろんあります。できたら歩きたくないし、考えたくないし、何もしたくないって思うのは普通だし、別に止めようとも思いません。でも、何が残念かって、こんな小さな国の中に人がいっぱいいるのに、お隣さんと友達になろうと思っていないことなんです。友達にまでならなくてもいいけど、お近づきになるどころか離れようとしているでしょう。それがすごくさびしいなって。

西成:むしろ、近すぎるからこそかもしれません。バッタは群れが多くなりすぎると、それ以上増えないように、仲間を殺しちゃうんですよ。私は日本の一部では、人間もそのレベルに達しつつあるんじゃないかと考えるときがあります。多くなるとお互いを嫌ってしまうんです。東京と大阪と名古屋で、日本の人口の半分が集中するという状況で、このバッタ現象が起きているんじゃないでしょうか。みんなお互いに対する優しさが薄れていて、いなければいいとすら思っている節がある。

LiLiCo:私は日本に住んで今年で26年になりますけど、以前と比べて「思いやりのある人が減ったなぁ」って如実に感じるのが、雨の日なんです。私が日本に来たばかりの頃は、道ですれ違うときに傘を斜めに傾けて通りやすくしてくれることが多かった。だから狭い道で混んでいても、けっこうスムーズに歩けた記憶があります。でも今は、傘同士ぶつかり合ってでも強引に行こうとする人が多くて、よけい渋滞になってしまっているんですよ。些細なことですけど、一事が万事こういう感じだと、みんなイライラして「お前がそうするなら俺もそうする!」っていう悪循環になるのは当然ですよね。

西成:江戸時代では、狭い道を通りすぎるとき「傘かしげ」という風習がありました。これは、お互いが通りやすいように傘を斜めにすることで、ハの字にかしげましょうというものです。同じく「肩ひき」という風習もあって、これも狭い道ですれ違うときに肩がぶつからないよう、スッと肩を引くしぐさのことをいいます。こういった人を気遣う所作を「江戸しぐさ」といって、大人が子供に教えるたしなみだったんですよ。当時の江戸は人口が世界一の都市だったんですけれど、その中でいかにお互い気持ちよく過ごしていくかという、非常に粋な良い教えだったんです。それが今はなくなってしまいましたね。

自分を変えれば社会も変わる

LiLiCo:今、「江戸しぐさ」なんて言ったら、たちまち「ウザいことを言う人だ」って煙たがられてしまいます(笑)。だから「ウザいことを言う人」自体も減ってきているのではないでしょうか。私のおばあちゃんは日本人なんですけど、94歳で亡くなった彼女から、戦争の悲惨さとか、日本全体が貧しい時代の生きる知恵とか、人としての基本的なことをたくさん教えてもらいました。だから教科書を読まなくても、日本はすごく頑張って大きくなったって知っているんです。もう大好きなんですよ。日本人も大好きですし、日本という国も大好き。でも、今の時代に生まれてくる人たちって、やっぱり最初から何もしなくても生きていけるくらいの環境や便利さに囲まれているから、今の人たちにとって「ウザいこと」であっても、大事なことは伝えてあげないといけない義務があると思う。だから私、これからもガンガン「ウザいこと」を言っていこうと思ってますよ(笑)。

西成:そう言ってくれるのはすごく嬉しいです。誰かが厳しいことを言わないとどんどん自分に甘くなってしまうんですよ。人の欲望にはきりがないので、それに全部答えるのがサービスだと、需要側も供給側も思ってしまうんです。わがままに対してどこまでを許して、ここから先は駄目だよっていう線引きを伝えることで、結果的にはその人の未来を守ることにもつながると思うんです。

LiLiCo:自分よりも社会全体のこと考えて動こう、なんてことは言いませんし、私だってそんな立派に生きていません。でも、せめて半径3メートル内にいる人には気を遣ってほしい。家族でも、上司でも、友だちでも何でもいいです。なぜって、それは自分のためにもなるからです。私自身、今はもう少しバランスよく生きていますけど、以前はちょっと異常なくらい、自分よりも周りを大事にしなきゃと思って生きていました。でも結果的に、それは良かったんです。人のために動かず、自分をだらだら甘やかしたりしていたら、たぶん今の自分はあり得ませんでしたから。人のためにやったから、今があるんですよ。「社会不適合者」なんて言葉がありますけど、基本的に社会は誰も受け入れてくれません。社会に合わせて合わせて合わせて……ようやく自分のポジションみたいなものが見つかって、ちょっとずつ居心地が良くなっていくんです。すると、人の気持ちがわかって優しくなれるし、自分にも自信がつく。そういう人が増えれば、「江戸しぐさ」みたいに「ウザいこと」が、「粋なこと」として継承されていく、素敵な世の中になるんじゃないでしょうか。

西成:利己と利他って表裏一体なんですよね。ギブアンドテイクじゃないけれど、利他であることで、結局は自分に返ってくるんです。ただ、そこには時間差があって、多くの人はそれに耐えられない。だけどそれをやった人は、最後には絶対良いことがある。LiLiCoさんは、そのロールモデルを地でいく人なので、頼もしい限りです。

Profile:LiLiCo(りりこ)
スウェーデン・ストックホルム生まれ。18歳の時来日、1989年から芸能活動スタート。TBS『王様のブランチ』に映画コメンテーターとして出演しているほか、フジテレビ『ノンストップ!』『SHELiCoの夜活』など、レギュラー出演番組も多数。映画、ファッションのイベントやトークショー、ラジオ、映画やアニメの声優も演じるなど、マルチに活躍している。

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