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第1部 パネルディスカッション『人と社会のこれから』を考える

第1部 パネルディスカッション『人と社会のこれから』を考える

三井ダイレクト損保MUJICOLOGY!研究所では、西成活裕所長の「渋滞学」を元に、「思いやり」を持って運転することが、渋滞緩和や燃費向上、事故減少に繋がるとして紹介してきました。4月13日には青山スパイラルでシンポジウムが行われ、西成所長、タレントのLiLiCoさん、ジャーナリストの佐々木俊尚さん、三井ダイレクト損保の船木隆平社長、交通安全アナリストの信田正美さんが登壇。「現代社会における人と社会のこれからの道を考える」をテーマに熱いトークを交わしました。5人の考える「思いやり」、そして日本社会が進むべき明るい未来とは?
(以下敬称略)

テキスト:宮崎智之 撮影:豊島望

クルマの中で5年?「人生の渋滞」を経験したLiLiCoさん

西成:これまでの社会では効率ばかりが重視される風潮が広がってきたと感じます。本日のシンポジウムでは、「本当にこれでいいのか?」ということを、まず皆さんと考えていきたいと思っています。LiLiCoさんはスウェーデン生まれで、来日した当初は相当苦労されたとお聞きしました。

LiLiCoさん

LiLiCo:はい。母方の祖母が東京・葛飾に住んでいて、よく日本のアイドル雑誌を送ってくれていたんです。それを読んで日本の芸能界に憧れ、18歳でストックホルムから日本にやってきまして。でも、日本のことを何も知らなかったから、気がついたら演歌歌手になっていて(笑)。あまりに貧乏だったので、どさ回り営業のライブで被っていた帽子も、100円ショップで買った飾りと段ボールで作っていました。まったく売れていなかった時代には、5年間クルマの中で暮らしていたこともあります。

西成:それだけ苦労されて、芸能界への夢を諦めようと思ったことはなかったのですか?

LiLiCo:諦めるのも1つの勇気だと思うんですけど、私は自分の最終地点を信じていたので頑張れました。そもそも、クルマの中に住んでいた極貧時代はスウェーデンに帰りたくても帰るお金がありませんでしたし。私は日本に来たとき、「作曲家の自宅の前に立っていれば1か月後にスカウトされ、2か月後にデビューし、3か月後には売れている」という甘い人生のレールを敷いていました(笑)。だから、それこそたくさんの「人生の渋滞」に出会いました。でも、そうやって遠回りをしていたときに経験したことはすべて宝物だと思っています。あとから考えて、無駄なことは何一つありませんでした。

西成:すべてが役に立つ経験だったということですね。

LiLiCo:自分の思い通りにいくことなんて、そんな簡単にはあり得ないんですよ。なのに、今は皆が自分のことばかり考えている時代。以前、イヤフォンで音楽を聴きながら赤信号を渡り、車にクラクションを鳴らされている人を見かけたことがあります。驚いたのは、なぜか信号を無視した歩行者のほうが、「なんだよ?」みたいな表情をしていたことです。これでは事故がなくなるはずがありません。まずは人間の考え方から変えていかなければ。

「悪意」も「思いやり」も可視化される社会に?

右:佐々木俊尚さん(作家・ジャーナリスト)

西成:佐々木さんの著書『レイヤー化する世界』(NHK出版新書)では、人と人とが国家を超えてつながっていく、これからの社会像が描かれています。とても興味深く読みました。

佐々木:ありがとうございます。これまでの日本人の人間関係は基本的に与えられた環境がすべてでした。どこかの会社に入社すれば、あとはその組織の中で人間関係の折り合いをつけながら生きていけば良かったんです。しかし現在では、「正社員」という指定席の切符を購入することが難しくなり、非正規雇用の人が増えています。また正社員になれたとしても、終身雇用してもらえるとは限らない。昔は同じ列車に乗って車両内の人間関係さえ上手くやっていけば、定年退職という終着駅に連れて行ってもらえたのに、現在は自分でクルマを運転して目的地まで辿り着かなければいけません。

西成:そうなると、これからの人と人のコミュニケーションのあり方も変化してきそうですね。

佐々木:そうですね。運転するクルマには自分の家族くらいしか乗っていなくて、他の人たちは別のクルマに乗っている状態です。顔も見えないし、どういう人かもよくわからない。道路で出会うのも一瞬です。そういった前提の上で、より良いコミュニケーションスキルを身につけていかないと、これからの世界ではすぐに事故を起こしてしまいます。ところで最近は、ツイッターなどでよくタレントのアカウントが炎上してしまいますよね?

LiLiCo:私は大丈夫です。イケメンとキスしたりしないので(笑)。

三井ダイレクト損保MUJICOLOGY!研究所 西成活裕所長

佐々木:それは良かったです(笑)。もちろん不祥事を起こしたのなら、ある程度、本人の責任でもありますけど、最近はテレビのクイズ番組で最後まで挑戦しなかったくらいのことで、その人のタイムラインが炎上することもあります。これまでも家や居酒屋でテレビを観ながらタレントの悪口を言ったりすることはありました。でも、それが全世界に見えてしまうのが情報社会の怖いところです。一人ひとりは悪気がなくても、それが何千、何万と可視化されてしまうと悪意の塊のように見えてしまう。

西成:悪口を言った人は、一瞬のストレス解消になるかもしれないけど、長い目で見ると絶対に自分が損してしまうと思います。

佐々木:まさにその通りです。ネットによって透明化された社会では、わずかな悪意でも丸見えになってしまう。ただ、一方では善意も可視化されやすくなったという良い面も出ています。2月に大雪が降り、中央高速で多くのクルマが立ち往生した際に、山崎製パンのトラックが積み荷のパンを他のドライバーたちに配ったというエピソードがありました。その行動がツイッターやフェイスブックで拡散され、山崎製パンの株価すらも上がったそうなんです。

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